合掌造りの里にて





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合掌造りの里で日本を知る旅
名古屋市から北上すること約2時間半、東海北陸自動車道を降りて細い山道を進むと、ユネスコ世界文化遺産、白川郷の合掌造り集落があります。今では、日本全国、いや世界中から、年間160万人以上の観光客が訪れ、昔のような山間のひっそりとした村ではなくなりましたが、それでも白川郷には、茅葺き屋根の合掌造りや囲炉裏が今も大切に保存され、訪れる人々を遠い昔に誘います。
白川郷の皆さんのご厚意により、いつしか名古屋国際学園の7年生の生徒達が白川郷を訪れ、歴史や文化を学び、田植えを体験させて頂くのが、毎年5月の恒例行事になりました。1泊2日の短い旅ですが、日本の文化になじみのない外国人の生徒のみならず、都会暮らしに慣れた日本人の生徒にとっても、白川郷での体験は、日本の文化の美しさ、伝統を守ること、自然との共存の重要性など、普段の学校生活では学ぶ事の出来ない様々なことを学べる貴重な機会です。今年も、約30名の生徒達が、白川村荻町の皆さんにお世話になりました。
白川郷の合掌造り
江戸末期建築の主屋(おもや)や土蔵などが現存する和田家は、白川村集落最大規模の合掌造りで、国の重要文化財にも指定されています。まず生徒達が驚いたのは、そんな歴史のある家に今でも人が住んでいることでした。鉄筋の家に住み慣れた現代っ子には、木材と茅で作られた昔の家が、人が生活するのに安全なのか不安だったようです。でも、和田家住宅を見学させて頂き、ご主人のお話を伺ううちに、そんな心配は無用だったことを知りました。 合掌造りの家屋には釘は一本も使用されておらず、梁も柱も屋根も、縄でとても頑丈に結ばれています。片方の屋根だけでも2000個ずつ、屋根全体で4000個もの結び目があるそうです。雪の重みから家屋を守る為に屋根が急勾配になっているのは有名な話ですが、その他にも、地震や豪雪から家を守る様々な工夫があり、300年前に建てられた和田家住宅が現存していることが示す通り、合掌造りの家屋はとても頑丈に出来ていることが分かりました。
囲炉裏は寒さが厳しいこの地方の冬には無くてはならないものですが、実は囲炉裏には暖をとる以外にも重要な役割があります。囲炉裏の煙は、床の隙間から屋根裏に昇り、屋根から抜けるようになっていて、この煙が屋根の結び目を強化し、更には茅や木材を燻して害虫から家を守るのです。そのため囲炉裏の火は夏でも絶やされる事がないのですが、それは常に火災の危険と隣り合わせであることも意味します。生徒達は昔の人の知恵や工夫に大いに感心するとともに、厳しい自然の中で伝統を守り未来に受け継いでいくことの重要性と責任、そして厳しさをとても重く受け止めたようです。
どろんこになって田植えを体験!
日本に住んでいればお米は身近な食材です。カフェテリアのメニューにも毎日ご飯がつきます。でも、気がつけばいつの間にか私達の周りから田んぼは消え、お米がどうやって出来るのか知らない子どもがほとんどです。中には生まれて初めて田んぼを見た生徒もいたに違いありません。そんな生徒達が、一面泥で覆われた田んぼに裸足で入るのだと聞かされたときには、少なからずショックを受けたことでしょう。12、3歳の女の子ともなれば、ミミズや毛虫さえも苦手なお年頃です。でもみんな勇気を出して田んぼに入りました。 あいにくの肌寒いお天気にも関わらず、実際に田んぼに足を踏み入れると泥の中は意外と暖かく、慣れてくると心地良くさえ感じました。横一列に並んで昔ながらの手植えを体験させて頂くうちに、最初は嫌がっていた女の子達も、だんだん楽しくなってきたようです。腰を屈めての作業は楽ではありませんでしたが、それでもほとんどの生徒が田植えが一番楽しかったと感想を残していました。
慣れない手で植えた苗がちゃんと育つのかちょっと心配ではありますが、村の方達は秋になったら収穫したお米を分けて下さると約束して下さいました。 生徒達は、大切な田んぼの一部を解放して下さった荻町の皆さんに感謝しつつ、自分たちが植えたお米を味わう時を楽しみにしています。
日本人の心のふるさと
合掌造りについて学び、田植えを体験することを通して、生徒達は昔ながらの日本の村の生活を知りました。 30年から40年ごとに行われる屋根の葺き替えは、200人もの村人が協力し合って行います。 現在ではほとんど機械を使って行われている田植えや稲刈りも、その昔は家族総出の大仕事でした。ひとつ屋根の下には数十人単位の大家族が生活を共にしていました。合掌造りや囲炉裏などの目に見える文化遺産に加え、日本古来の集団生活の様式、助け合い、支え合う精神は、農耕民族である日本人の原点でもあり、現代では忘れ去られつつある大切な日本の文化の1つです。 白川郷で、日本人でもなかなか体験出来ない貴重な日本文化を体験させて頂いたことは、生徒一人一人の胸に深く刻まれたことでしょう。
(2010年6月)
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