模擬国連
模擬国連ーModel United Nations
考えてみたことがありますか? イスラエルとパレスチナの紛争を解決し得るかもしれない話し合いの場に居合わせるのはどんな感じなのでしょう? アフガニスタンやコンゴ、コソボなど、世界中の紛争地域での平和維持活動を推進するための話し合いで意見を求められたとしたら? 発展途上国の貧困問題解決や、難 民救済のための政策策定に関わることが出来るとしたら? 地球温暖化について世界各国の指導者たちと意見を交換する機会に恵まれたら? 2009年11 月、シンガポールに各国から1000名以上の高校生を集めて5日間にわたり開催された、ハーグ模擬国連会議(THIMUN)に参加した名古屋国際学園 (NIS)の10年生から12年生までの12名の生徒達は、まさにそんな体験をしたのです。
若き外交官たち
模擬国連とは、生徒達が様々な国の国連大使に扮し、一国の代表として国連総会や安全保障理事会などに出席することを、ロールプレイングとシミュレーションを通して身をもって体験する教育活動です。実際の国連と同様に、現実の世界で起こっているタイムリーかつ重要な問題について討議したり、他国の支持を取り付けるため根回しをしたり、決議案を採択したりするのです。取り上げられるのは人権問題、環境問題、経済発展、軍縮、難民問題、そして世界平和についてなど、実際に国連でも討議される議題です。模擬国連活動は世界中に広まっており、日本国内でも行われていますが、このように世界各国の生徒が集まる模擬国連への参加は、インターナショナルスクールだからこそ出来る体験です。
各国の代表が目指すのは、国連総会本会議で決議案を通過させることですが、その為には、各代表が委員会において協力しあうことにより、他国との連携関係を発展させ、同盟関係を築いていく必要があります。これらの委員会もまた、軍縮国際安全委員会(東南アジア地域の安全保障、武器や軍事技術の取引規制、アフガニスタン情勢、地中海沿岸諸国の安全保障)、経済金融委員会(経済発展途上国における教育問題、対外債務を抱える発展途上国への支援問題、マクロ経済政 策、産業協力を通しての貧困撲滅)、社会人道文化委員会(紛争地帯における性的暴力の廃絶、自立支援を必要とする人々のための社会的保護)、安全保障理事会(ハイチ情勢、コンゴ情勢、アルカイダ、タリバンへの制裁措置)、経済社会理事会(環境汚染による健康被害の削減、貧困撲滅のための国際協力の強化)など、実際の国連と同じく、具体的で現在の世界情勢を反映した様々なテーマに焦点を当てています。生徒達は、討議したり、交渉することを通して、現実の世界で起こっている問題への理解をさらに深めながら、様々な視点からそれらの問題の解決策を探ります。
リサーチ、リサーチ、リサーチ
NISでは9月、新学年度が始まってすぐに模擬国連に参加するメンバーのミーティングが始まりました。参加者は自分の母国以外の国の代表にならなくてはなりません。NISの12名の生徒達にはそれぞれ、スーダンとウズベキスタンの代表、そして中立の立場として参加する本会議の副議長、国連環境計画代表の役割が割り当てられ、早速各々の役割を果たすために必要なリサーチが始まりました。毎週放課後に行われる校内でのミーティングと、11月の模擬国連の本会議に向けて、自らが代表する国の様々な問題や、その国の外交政策や国連での参加傾向などを理解しなくてはなりません。つまり、その国の代表に扮するために、 その国の政治史、過去の国連での投票実績、その国の指導者が行ったスピーチや発言、賛成した決議案、過去の決議案を起草したり投票したりするにあたってどのような国々と連携または対立して来たかなどを調査するのです。準備を進めるにつれ生徒達は、議会における討議規則や国際法、決議案起草の細かな手順なども学ばなければならないことにも気付き、この任務の重大さを改めて認識するようになります。
国際社会の縮図
そして迎えた模擬国連当日。ビジネススーツに身を固めた様々な国からの高校生が集まる様子は、まるで本物の国連総会本会議場に足を踏み入れたようです。自分の持ち寄った決議案が他国の代表から反対を受けたり修正されたこと、ある国から提出された決議案に感銘を受けたこと、思うように意見を述べられなかった自分をもどかしく感じたこと、自分の書いた報告書が他国の代表に褒められて嬉しかったこと、と短い間に色々なことがありましたが、異なる意見や立場の国々が合意に至る難しさや、反対に違いを乗り越えて合意に達したときの充実感を味わったり、自分に自信を持ったり反省したりの5日間でした。
また、それぞれの利害関係の中で対立したり同調したりする各国の立場が理解出来るようになった一方で、このような場で常に中立の立場をとる国連組織下の機関やNGOの果たす役割が平和でより良い世界を作るためにいかに重要かを、改めて痛感したとの感想を残した生徒もいました。
世界が違って見える瞬間
模擬国連に参加した生徒達は、他人の役割を演じ、その人の立場や見解に立つこと、現実の世界が直面している問題や他人の利害関係についての理解を深めるこ と、そして世界各国から集まった若者達との関わりを持つ事などによって、普段の学校生活では体験できない様々なことを経験します。生徒達が世界の諸問題に対する深い洞察力を得、真の国際協力について学ぶためには絶好の機会です。本会議までの約2ヶ月、授業やクラブ活動の合間を縫って行なう調査やディスカッションなど膨大な量の準備作業は決して楽ではありませんが、この貴重な体験をした生徒達の目には、今までとは全く違った世界が映っていることでしょう。そしていつかこの中から、実際に国連機関で、または国連大使としてより良い世界をつくるために活躍する人物が現われる日が来るかもしれません。
(2009年12月)
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