蛍の棲む小川を守ろう




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蛍の棲む小川を守ろう
地域の皆さんと取り組む環境保全
カワモズク、スナヤツメ、ナガエミクリ、ミゾソバ、カタクリ、カヤネズミ、ヘイケボタル・・・これらは水のきれいな自然のままの河川に生息する希少な生物です。 実は名古屋にもまだこのような生態系が残る場所があるのです。しかしながら、都市化が進み、便利になる一方で、今まで自然が手つかずのまま残されていた場所が存続の危機にさらされています。地域の皆さんのご協力で、名古屋国際学園の高等部の生徒達は、人間と自然との共存を探りながらの環境保全の取り組みに参加させて頂いています。
才井戸流(さいどながれ)
名古屋の都心から15キロほど離れた守山区、名古屋国際学園のある辺りは、人口200万人の大都市にありながらも、緑豊かな自然環境に恵まれています。それでも近年は、名古屋のベッドタウンとして人口は増加し続け、区画整理に伴い開発が進んできました。日本で唯一、高架上の軌道と地上の両方を走行するガイドウェイバスの路線が設けられ、道路が拡張されて信号機も増え、住宅や店舗、医療機関、更には大型ショッピングセンターも進出し、今後もこの地域の都市計画が、次々と実行されていくことでしょう。 人間にとっては便利で住みやすい町になってきましたが、その陰で、犠牲になるのは自然の生き物たちです。36年前から、この地域の河川にきれいで快適な生活環境を取り戻し、次代へ引き継ぐことを目標に活動を続けて来た、「矢田・庄内川をきれいにする会」の皆さんは、20年前から学校の近くを流れる希少生物の住む小川、才井戸流(さいどながれ)の保護活動に取り組んでいます。 3年ほど前から、才井戸流のある地区も、区画整理事業による工事が始まりました。周辺の道路の拡張工事が進行し、田んぼが姿を変えた空き地の草が刈り取られて整地され、近くには新たな大型ショッピングセンターの建設予定地もあります。そんな中、「きれいにする会」の皆さんのご尽力で、その一帯は、出来るだけ才井戸流を自然のままに残した自然観察公園として保存されることになったのだそうです。湧き出る水を活かし、訪れる人にもっと自然を楽しんでもらうため、公園内に原風景である田んぼをイメージした自然観察池を作る計画も進んでいました。
環境科学、地域奉仕、そしてIBプログラム
学校のすぐ近くにありながら、生徒達は、湧き水が流れ込み、ホタルが生息するその小川の存在を全く知りませんでした。生徒達の取り組みは、「きれいにする会」の皆さんのプレゼンテーションにより、環境保全における才井戸流の重要性と、保護の必要性を認識することから始まりました。 その後、話し合いと現地の見学を経て、生徒達は、才井戸流の自然観察及び水質分析の実施、周辺の清掃作業、そして自然観察池を作るお手伝いという形で参加させて頂くことになりました。高等部の環境科学の授業に連動した、生物や水質の調査から、地域の皆さんとともに、いかにして人間と自然が共存出来る環境を作り上げるかを追求する取り組みへと発展していくことになったわけです。それは期せずして、教育を通してより良い世界の創造を目指すIBプログラムがLearner Profile (理想の生徒像)として掲げる特性のひとつ、「他人や環境に対しての思いやりがある人」とも合致しており、生徒達には様々な意味で大変貴重な学習機会となりました。
人間と自然の共存のために
2月のある日、生徒たちは再び才井戸流を訪れました。この約1ヶ月前には「きれいにする会」の皆さんの手で、川のすぐ近くに新しい池が出来上がっていました。豊富な地下水をたたえた土壌からは、穴を掘るとすぐにぼこぼこと水が湧いてきたのだそうです。 まずは、才井戸流の湧き水と生活排水の流入水、それぞれのpH値*とCOD (化学的酸素要求量)**を測定しました。工事の影響による河川の汚染を調べるため、今後も定期的に調査を続けます。 次に、 才井戸流に住む生き物を網ですくって調査しました。慣れない作業に加え、生き物の活動が少ない寒い季節だったためか、なかなか思うようにすくえず悪戦苦闘したものの、約1時間の作業で、メダカ、ドジョウ、スジエビ、タニシ、ザリガニ等が確認されました。生態系に影響を及ぼす外来種のザリガニを除き、川で見つけた生物は新しく出来た池に放流しました。春になればもっと生き物の活動が活発になり、この新しい池が多くの生き物の命を育み、初夏には沢山のホタルが水辺で幻想的な光を灯してくれることを祈ります。 周辺の開発は着々と進んでいきますが、この生態系を守るため、今後も生徒たちの活動は続きます。 人間と自然の共存を目指して地域の皆さんと手を携えた、環境保全への取り組みは始まったばかりです。
*pH値 酸性、アルカリ性の度合いを示す数値。pH=7を中性とし、数値が小さくなれば酸性、大きくなればアルカリ性。自然水のpHは5〜9。
** COD 代表的な水質の指標のひとつ。数値が大きいほど水中の有機物が多く、汚濁の程度も大きい傾向にある。
(2011年4月)
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